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時事彩々≪第17回≫消える厚生年金基金




 厚生年金基金の解散が相次いでいる。2014年末に483ある厚生年金基金のうち290基金が解散を予定しているという。しかも、そのうちの9割に当たる261基金が2013年度末には年金の積立不足に陥っていた。厚生年金基金解散の動きが加速化している背景には、平成26年4月1日から施行された「厚生年金基金制度の見直し法」がある。そもそも厚生年金基金制度とは厚生年金の一部を国に代わって給付(代行給付)することで、基金独自の上乗せ給付を行うことができる制度だ。いわば私的な企業年金と公的年金の合体作のようなものである。厚生年金の代行給付を行わない企業年金とはその部分で異なる。ところがこの厚生年金基金が軒並み積立不足を招いていることから、政府による見直し法の制定となった。

 その見直し法の中身についてみてみると、1.今後は厚生年金基金の新設を認めない。2.平成26年4月から5年間の時限措置として優遇措置のある特例解散を代行割れ基金に促す。3.平成31年4月以降は基準を満たさない(資金力のない)基金については厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聴き、解散命令を発動できる。というもの。これでは解散が加速化するのも無理はない。

 では、なぜ厚生年金基金が積立不足に陥ったかと言うと厚生年金の代行利率にある。創設当時から利率は5.5%に固定されていたが、2005年度から3.2%となった。つまり、厚生年金基金は3.2%を超える資産運用を行わなければ当然資金不足となる。現在の経済状況でこれはかなり厳しい数字だ。基金が解散したとしても、国による基礎年金と厚生年金は正当に支払われる。ただ仮に厚生年金基金が独自の掛け金を設定していて、代行割れで解散した場合にはこの掛け金は掛け捨てになると考えていい。この見直し法は政府による事実上の厚生年金基金放棄とみえる。厚生年金基金に加入している多くは中小企業。被害は上乗せ給付に限られるとはいえ、国による基礎年金や厚生年金も同じ事態に陥らないとは限らない。将来の年金対策は待ったなしという危機感が政府や官僚にどの程度あるのか不安を覚えずにはいられない。



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