家具・インテリア情報 時事・コラム

時事彩々≪第21回≫委任状の行方




 静まり返った社長室に家具メーカー社長の長いため息がもれた。さらに、「どうすべきだろうか」と自問とも問いかけともとれるつぶやきが続いた。「どちらに委任状を出すかは、本当に苦渋の選択なんですよ。株主総会での委任状争奪戦はいわば勝つか負けるかの戦です。そこに参戦するということはそれだけの覚悟がいる。納入業者として今後の安定的な取引関係と大塚家具の発展を願って株式を取得したのに、これがあるためにこんなに苦しい思いをしなければならないとは…」。眉間には深いしわが刻まれ、まるで一言一言を絞り出すように心情を吐露した。メディアが、ワイドショーが盛大に騒ぎ立てた大塚家具の委任状争奪戦の舞台裏には、決断に迷い苦しみ、決断後もその不安を拭い去れない人々の姿があった。この社長がどちらに委任状を出したのか、もしくは棄権したのかは分からない。だが、あの長いため息はすべての株式をもつ納入業者の気持ちを代弁していたものだったのではないだろうか。

 消費の冷え込みが長引き業界全体が苦しい時期ではあるが、大塚家具が売上不振からいち早く回復するように願ってやまない。異常な状態にまで追い込まれた株主総会は決着した。今後は、当事者もステークホルダーも広く家具業界の方々も、全員が協力して業績回復に向けた思いを共有して欲しいとつとに思う。



家具・インテリア情報
更新情報
アーカイブ(過去記事)