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時事彩々≪第29回≫ブラック企業名の公表
過重な労働を課しているとされる企業、いわゆる「ブラック企業」の名前が厚生労働省より公表されるようになったことをご存じだろうか。もし自社の企業名がブラック企業だと公的機関から名指しされようものなら、どのような形態の企業であってもその損害は大きなものとなる。ただし、ブラック企業として社名を公表される企業には条件がある。その条件とは、①残業代不払いなど労働基準法違反があり、1ヶ月あたりの残業、休日労働が100時間を超えている、②1事業所で10人以上の労働者、または事業所労働者の4分の1以上に違法な長時間労働がある、③約1年間に3ヶ所以上の事業所で違法な長時間労働がある。これら3つの条件すべてを満たした企業のみが名前を公表される。ただし、従業員300人以下の企業は対象外となる。
必然的に大企業に限ったことになるが、これに対して「中小企業にこそブラック企業が多いはずだ」「なぜ企業規模で区別するのか分からない」などの批判も多い。しかし、実際に労働基準法に違反した企業をすべて公表するなどは非現実的な話だろう。現代の日本社会のなかで、「わが社は労働基準法にまったく違反していない」と胸を張って主張できる企業がどれほどあるだろうか。社名が多くなれば、公表による悪質な違反行為を未然に防ぐという本来の目的が薄らいでしまうだろう。さらに言えば、厚労省が現実的に多くの重度な労働基準法違反を把握しきれていないという現実がある。
もし、労働基準法を厳格に適用するならば、労働基準法の内容を現実社会に適合したものにしなければならないはずだ。そもそも労使の問題は双方の円満な関係が基本にある。零細企業で基準法通りの労働条件で働いてもらうが、半年後に会社が倒産すると言われて社員が幸せであるだろうか。もちろん、人権を無視した悪徳な違反は見逃すべきではないが、まず現実に合わせた運用を考えるべきだろう。